インスタレーションとは、「設置する」を意味する「install」が名詞化された造語です。壁に掛けられた絵画や、台座に据えられた彫刻といった従来の美術の展示方法から新たに発展し、オブジェや装置が設置された場所や空間全体、そしてそこでの体験自体を作品化する表現スタイルを指します。
これまで長い間、音楽や演劇が時間と共に消え去るのに対して、美術作品は『モノ』として形を留めていると考えられてきました。例えば、ミロのヴィーナスやダ・ビンチのモナリザ、ピカソのゲルニカも、その芸術的価値は『モノ』としての作品の中にあると皆が感じ考えています。
しかしながら、インスタレーションは、サイトスペシフィックな性質を持つため、展示期間中しか現存しない「一過性」の作品である場合がほとんどです。現代のアーティストたちは、この一過性を積極的に捉え、従来の美術で取り扱われることのなかった素材、ニューメディア、テクノロジーなどを組み合わせた作品や、作品と鑑賞者や、鑑賞者同士といったコミュニケーション自体を作品として扱うなど、様々なインスタレーションを展開してきました。
『モノ』としての作品に価値や重要性が置かれてきた美術史の中で、インスタレーションは新たな価値や考え方を生み出したと言えます。
本特集では、近年、現代美術を代表するスタイルの一つとして、国際展で目にすることが当たり前になった、インスタレーションの名作の数々を4つのグループに分けてご紹介します。